2014年度 炎環四賞
第十八回「炎環賞」受賞作
昼寝覚
柏柳 明子
- 沙羅の花明るき声で交代す
- 霊園の風の中なる瑠璃揚羽
- 青葉木菟天井高き旅の夜
- 神宮の杜黒南風の太くなり
- ハンモックきらめいてゐし鳥の声
- 大噴水背中並んでをりにけり
- 虹立てりラーメン店の行列へ
- 曲名を思ひ出せずに梅雨の月
- 朴の花両手こぼるる時間かな
- 夜濯の夫よ三番から歌ふ
- 広東語日焼の顔の振り返る
- 賞状に囲まれてゐる昼寝覚
- 水中花平らなまなこ近づきぬ
- 生意気な言葉の混じるシャワー室
- あめんぼの渡つてゆきし夜の水
- リハーサル流線に汗落ちにけり
- 炎昼の柱一本づつに音
- 短夜の財布にたわむ領収書
- 蟬の声沈殿したる小学校
- 鍵盤をあふれてゆきし夕焼かな
受賞のことば
このたびは第18回炎環賞を頂き、本当にありがとうございました。石寒太主宰、全選考委員の皆様へ御礼申し上げます。佐藤良重さん、きっと見てくださっていますよね。
18といえば、私の俳句歴とも重なります。受賞の連絡を頂いた時は、初めて担当した俳句講座の最終回の準備中。最終回はミニ句会。初句会の方も多く、笑いも飛び出す席上、自然と始めた当時を思い出しました。3年ほどやっていると俳句に慣れ、いつしか楽しさから「自分の顔のある俳句をどのように詠むか」という壁にぶち当たる。テクニックはある程度身についても、その先への突破口が見つからない日々。しょうがない、時間に任せるしかない。俳句を面白いという気持ちが少しでもあるのなら、ペースを落としてもとにかく続けてみよう。そうして続けてきた先に見えた風景が、2012年の現代俳句新人賞、そして今回の炎環賞という思いがけないものでした。
今後、私の句がどう変わっていくのかはわかりません。でも、続けることで初めて見えてくる、心身に染み透るものがある。そのことを胸に、これからも歩いていきます。