ホーム
炎環の俳句

2015年度 炎環四賞

第十九回「炎環賞」受賞作

天牛

宮本 佳世乃

受賞のことば

俳句は言葉で言葉を書く。

何を言葉にするのかも、作句において大切な要素だ。しかしもっと大事なのは、自分が得たなにものかを第一印象でどのように把握し、どのように言葉にしていくか。HOWの部分が肝だと思っている。

言葉でしかあらわせないもの、そして、言葉によって立ち上がりくるもの。書いたとたんに立ち上がる世界を自らの眼に見せていきたい。

今、こうやって息をしていることの偶然、この息をしている瞬間は、二度とない。たまたまこの時代に生まれてきて、たまたま生きている。そんななか、一七音によって、私はふたたびあの時のなにものかと出逢うことができる。

「天牛」を、過去の自分が読んだらどう思うだろうか。言葉によって何かが立ち上がっていただろうか。私自身を瑞々しい気持ちにさせてくれるだろうか。

今回の受賞に甘んじることなく、もうひとりの自分とともに俳句と向き合って、意識的に今を過去に変えていきたい。