2016年度 炎環四賞
第二十回「炎環賞」受賞作
耳鳴り
深山 きんぎょ
- 春暁の雨音低く目覚めけり
- 玄関のためいきひとつシクラメン
- 薄ら日を集め白梅匂ひけり
- ふらここの風のきらきら反抗期
- 蒼天のゆるみてさくらさくらかな
- 空つぽの小函ひとつよみどりの夜
- フェルメール・ブルーのスカート夏の朝
- 整列の笛のひと吹き桜の実
- まだ宙へとどかないのね立葵
- 青葉闇電車の音の過ぎしより
- 耳鳴りの渦の真ん中梅雨の蝶
- あめんぼう夕日とろりととけはじむ
- 夏の雲もくもくフィガロ理髪店
- 夏蝶に先を越されし曲り角
- 目の端に入れ置く夫よ夏帽子
- 青胡桃こんと音する信濃かな
- 川波の影ひろひをり赤トンボ
- 眼鏡屋の明るく灯る終戦日
- 満月の杜美しく老いにけり
- 影足してをはるスケッチ榠樝の実
受賞のことば
この度は第二十回炎環賞を頂き、誠に有難うございました。九月の本部句会にて、受賞を知らされ、勿論嬉しかったのですが、私でいいのだろうかと、身が竦みました。
去年佳作になりました「スケッチ」の評にありましたように、平凡な日常生活を詠ってまいりました。飛びたくても飛べぬ、きんぎょです。自分の限界も感じておりましたが、自分の思いを自分の言葉で表現すればいいのだと、少し開き直りました。まだまだ経験不足ですし、勉強不足です。少しずつでも俳句の坂を上り、その先の景色が変わってくるか、知りたいと思います。
入会して間もなくの二〇〇九年より、怖いもの知らずに応募し続け、今回で八回目になります。続けてきたことが、今回につながったのかもしれません。私の平凡な日常詠でも、こんな素晴らしい賞が頂けたのです。炎環賞に応募されたことの無い方は、是非応募されるようお奨めします。二十句揃えるということは、必ず自分の力になると思います。
この機会に、お世話になりました炎環の全ての皆さまに、深く感謝申し上げます。
初学からご指導賜りました寒太先生、有難うございました。深く深く感謝して居ります。