2018年度 炎環四賞
第二十三回「炎環新人賞」記念作品
鈴木 健司
駱駝
- 海原にゐてまだ春雷の鳴りやまず
- 爪先へあはゆき耳塞ぐ自由
- まなこを開く春塵の日の駱駝
- 春ともし前頭葉のなかに笛
- 春昼のガードレールに座りをり
- 斜面より斜面見てゐる春の鹿
- レースカーテン欠伸は第二外国語
- シンバルの音放たれし夏の空
- 同窓の近況どこまでも向日葵
- 面長な犬と見てゐし十三夜
- 聴力の限界蟷螂の素振り
- 振り返るたびに鈴虫の気配
- 紅葉散る放置自転車透明に
- 釣瓶落し包丁の音ざくざくと
- 沢庵の皮のかたさの不十分
- 凍星や短波ラジオからノイズ
- 和紙を漉くやうに日脚の伸びてきし
- 氷柱一つカメラに近すぎて邪魔
- 断面で造られてゐし霜柱
- 初夢や鏡に映らない自分
受賞のことば
この度は炎環新人賞を賜り、どうもありがとうございました。大変恐縮しております。俳句を始めた当時、俳句のルールは「五七五」「季語は1つ」「ヤカナとヤケリは禁止」ぐらいしか知らず、句会なるところに連れていかれ、何とか句を捻りだしたことを覚えています。今思うと、かなり早い段階で比較的同人が多い句会に参加していました。たまに褒められる、強力なダメ出しをされる、無点という制裁、など厳しい面もありましたが、作句の向上の為には貴重で大事なステップだったと思います。
もちろんこれらの句会に参加できたのは柏柳明子の広い人脈のおかげです。第2の師としても尊敬しており、とても感謝しています。
そしていろいろな方向の句を自由に作ることのできる結社に所属していることは非常に恵まれていると実感しております。なによりも石寒太先生をはじめ諸先輩方のあたたかい御指導に多大なる感謝を申し上げます。今後ともよろしくお願い致します。