2025年4月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の炎
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)4月号の「精鋭16句」に、星野いのりが「鬼やらひ」と題して〈寒月に
海神 のなき蒼さかな〉〈鬼かつて女でありし鬼は外〉〈鳥黐 を捩れ嚙むなり雀蜂〉〈畑打の歯軋りに歯の欠けやすき〉〈立子忌の沖の煤めく太陽柱 〉〈苔を吸ふ蝶と隣に伏す蝶と〉など16句を発表。 - 総合誌「俳句界」(文學の森)4月号の「北斗賞受賞作家競詠」に、第11回同賞受賞の西川火尖が「地の刺繍たる生活」と題して〈白鳥や病のやうに言葉湧く〉〈子はガザの話いやがる春隣〉〈真白なる凧揚げに喉晒しをり〉など7句と短いエッセイを発表。
- 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)4月号の「作品7句」に、谷村鯛夢が「ゆうたやろ」と題して〈加持祈祷めいて紅白歌合戦〉〈日本の吸込み口や寒満月〉〈春が来るおかあちやんがゆうたやろ〉など7句を発表。
- 「WEB版現代俳句(現俳ウエブ)」(現代俳句協会)4月号の「現代俳句評論賞 「競詠」相互評」に、田辺みのるが「不随意筋」と題して〈腓返り芽吹きやまざる戦火の地〉〈残暑厳しく躾らる不随意筋〉など5句を発表。競詠の相手は外山一樹氏で、〈残暑厳しく〉の句について氏は〈文法的には「躾らる/不随意筋」なのだろうが、「躾らる不随意筋」と読みたい。本来どうにもならないものを支配しようとする矛盾と徒労は、それ自体いかにも人間らしい。厳しい残暑のなかで厳しく躾られた不随意筋の持ち主はたくましくも哀感に満ちている〉と鑑賞。一方、氏の一句《それで何 春のさかなはぜんぶ光る》について田辺は〈確かに、春の魚はぜんぶ光る。白魚、公魚、桜鯛、鰆。鯰によく似た黒っぽいゴンズイですら4本の黄色いストライプで光るかのようだ。しかしこのような解釈は最初から拒否されている。「それで何」、いきなり拒絶される。「ぜんぶ」は全部である必要はない。だって春なのだから。魚はみな濡れている。春の水は光。春はぜんぶを光らせる〉と鑑賞。
- 「第22回「富士山を詠む」俳句賞」(富士宮市)が、応募総数3,641句(1人1句のみ)の中から、5名の審査員(渡井恵子・嶋田麻紀・須藤常央・滝浪武・渡井一峰)それぞれの特選20句を基に各賞を決定。
・須藤常央選「特選」〈遠富士や音なく絶え間なく清水 田辺みのる〉
・滝浪武選「特選」〈遠富士や(前掲)田辺みのる〉 - 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)4月号「四季吟詠」
・渡辺誠一郎選「秀逸」〈冬の湯や闇が漢を覗き込む 松橋晴〉
・鈴木しげを選「佳作」〈悩ましき事の多さよ冬銀河 奥野元喜〉
・山本潔選「佳作」〈寝かされて聖歌流るる歯科医院 森山洋之助〉 - 総合誌「俳句界」(文學の森)4月号「投稿欄」
・鈴木しげを選「秀逸」〈冬ぬくし研ぎ師喜助の越後弁 小野久雄〉 - 新潟日報2月9日
・津川絵理子選〈老いてなほ音には過敏狩の犬 鈴木正芳〉 - 新潟日報2月17日
・津川絵理子選〈手のひらに犬の胎動日脚伸ぶ 鈴木正芳〉 - 産経新聞3月20日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈着ぶくれの父の防弾チョッキかな 谷村康志〉 - 日本経済新聞3月29日「俳壇」
・横澤放川選〈大病を経ての信仰苗木植う 谷村康志〉=〈病むと言うことは同時に自分の存在根拠を問う時機かとも。あらためて未来へ育つ苗木を思う〉と選評。 - 朝日新聞3月30日「朝日俳壇」
・長谷川櫂選〈大陸にむかし孔孟霾れり 渡邉隆〉 - 産経新聞4月3日「産経俳壇」
・対馬康子選〈見知らぬ児ひとり加はり石鹸玉 谷村康志〉 - 毎日新聞4月7日「毎日俳壇」
・西村和子選〈仏滅を気にせぬ婚儀つばめ来る 谷村康志〉
・井上康明選〈卒業やネコの額のグラウンド 岡良〉 - 産経新聞4月10日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈熊穴を出づる報せが矢継ぎ早 谷村康志〉