2014年11月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 石寒太主宰の講演・吟行等のご予定
11月 9日(日) 高津俳句大会にて川上弘美氏と対談
11月24日(月) 諏訪吟行(~25日・洋洋句会)
2015年1月18日(日) 炎環新年句会にて講演 - 総合誌「俳句」(KADOKAWA)11月号に、石寒太主宰が「放浪俳人の系譜を継ぐもの――惟然・井月、そして風羅念仏のことなど」と題した評論を寄稿し、〈いま、放浪の俳諧師たちが、熱く注目を浴びはじめている〉として、広瀬惟然と井上井月を概説。〈芭蕉の晩年の異端児・放浪の俳諧師惟然から、戦後最も注目を浴びる存在になった自由律の放浪俳人山頭火や放哉を繋ぐ人物として、井月はいまや最も重要な俳諧師として注目を浴びている〉と論じています。この評論は、8月の「井月さんまつり」(長野県伊那市)における寒太主宰の講演に関連したもので、同誌は「俳壇ヘッドライン」で「まつり」の模様を写真と記事で紹介。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)11月号の「セレクション結社」が「炎環」を紹介。記事に加え、石寒太主宰の写真と主要同人作品20句を掲載。また同誌グラビアにも寒太主宰の写真。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)に石寒太主宰が連載中の「牡丹と怒濤――加藤楸邨伝」。11月号は「第20章「真実感合」の記録が『芭蕉講座』発句評釈の三冊になった」。草田男の「手紙」に対する〈反論〉の続きです。「手紙」の全文は、4月号の本論に引用されています。〈草田男は、楸邨の芭蕉評釈(『芭蕉講座』)をまったく読まずに、「手紙」を書いたのだろう。自分の命にかえて執筆した楸邨の論に対して、草田男は「思わせぶり」の五字で片付けてしまっている〉。それはとんでもない話で、楸邨みずからが自身の「戦闘記録である」と書いているこの「評釈」は、楸邨が〈自分なりの芭蕉を極めようと、発想契機の角度から取り組み〉、そのためには〈当時としては最高水準の作業〉を伴い、〈従来の学者が触れ得なかった、俳句実作者としての研究の第一歩〉となったこと、〈そして、この大著を通して楸邨は育ち、その中から打立てられたのが、「真実感合」の俳句理念の美学だった〉ことを、筆者(寒太主宰)は力説します。
- 毎日新聞10月7日のコラム「季語刻々」(坪内稔典氏)が〈すぐ睡くなる父の夢柚子ふたつ 石寒太〉を取り上げ、〈卓上にユズが二つ。ユズは鍋料理で使う。鍋の用意が整う前に老齢の父はうつらうつらしている。作者は30歳前後からの私の俳句仲間だが、気づいてみれば彼も私もすぐ眠くなる父、いや、祖父になっている〉と鑑賞。
- 結社誌「からまつ」(由利雪二主宰)10月号の「他誌燦々」(柴崎雨水氏)が〈人の死へ春の銀河の眩しかり 石寒太〉を取り上げ、〈宇宙開発が進んだようでも、人が到達したのは月だけ、かぐや姫の存在否定だけ。宇宙は広大謎だらけ、神秘的〉と鑑賞。
- 結社誌「太陽」(務中昌己主宰)10月号の「私の出会った俳人」(小島哲夫氏)は「石寒太」。〈石さんは、「俳句あるふあ」の編集主幹を長年されて、マスコミ界をずっと歩いてきて、ご自身、文章の本も多数出版されている。結社「炎環」を主宰、句会、カルチャー教室の指導もやって、そんな激務のなかからこれだけ多数の本の執筆に要する時間が、よく確保できるものと驚く〉と述べたあと、句集『生還す』から20句を選んで鑑賞。その中の1句〈怖るるに足らぬ癌なり桃の花〉について〈癌に対して、一読、強気のような表現だが、本当のところはどうか。弱気になる自身の気持ちを叱咤し、激励するつもりでこの句、こう言ってみたのであろう〉と。
炎環の炎
- 第29回国民文化祭・あきた2014「奥の細道全国俳句大会」(文化庁・秋田県・にかほ市等主催、10月19日)「にかほ市長賞」〈コピー機の吐き出す楽譜夏匂ふ 永田吉文〉
- 「第30回俳句友の会コンクール」(NHK学園)宇多喜代子選「秀作」〈ゴム跳びの背より高き裸足かな たむら葉〉〈廃線の江差追分聞く夏日 佐藤理〉
- 総合誌「俳句」(kadokawa)11月号が「第60回角川俳句賞」を発表。応募総数835篇のうち、受賞は逃したものの、選考会で〈最終段階まで討議の対象となった候補作5篇〉の一つとして、岡田由季「夜の色」の全50句を掲載。この作品を一位に選んだ選考委員の正木ゆう子氏は、「夜の色」には〈とてもいい句が多かった。いろいろな持ち味があって、面白い句もあれば、あっさりした嘱目の句も、個性的な句もあり、バラエティがありました。かなりベテランの人かもしれない。でも、手練感はないんです。形式というものを使いこなしている感じがあります。いちばんいい句を挙げるとすると、《束にしてわづかの魔力雪柳》でしょうか、薔薇なら束にしたら大変な迫力があるが、《雪柳》ならではの表現がある〉と批評。
- 機関誌「現代俳句」(現代俳句協会)10月号が「第32回現代俳句新人賞」を発表。「選考経過」(鳴戸奈菜氏)によれば、応募総数43篇のうち、受賞は逃したものの、選考委員7名の推薦に挙がった作品に、山岸由佳「倒立」(6票)、岡田由季「七曲り」(5票)、荒川倉庫「豚三十句」(4票)があった。選考委員長浦川聡子は「七曲り」について〈感覚が優れており、措辞が丁寧であるところに好感がもてた〉と、選考委員鈴木明氏は「倒立」について〈技巧的な巧さでは一つ頭の抜けていた〉と、選考委員林桂氏は「豚三十句」について〈「豚」の群像劇仕立てで、無自覚な一人称俳句を退けて、批評的に人間の日常を浮かび上がらせる力があった。30句単位の募集にも添ったできまばえ〉と、それぞれ批評。
- 総合誌「俳句αあるふぁ」(毎日新聞社)10-11月号の「今月の俳句」に、岡田由季が「宝石箱」と題し〈我が町に曇のマークねこじやらし〉など7句と短文を発表。
- 総合誌「俳句」(kadokawa)11月号「平成俳壇」小島健選「秀逸」〈海鳥の海鳥を追ふ沖縄忌 曽根新五郎〉
- 機関誌「俳句春秋」(NHK学園)138号「春秋俳壇」金子兜太選「秀作」〈をさな子に見つめられつつ草の笛 たむら葉〉
- 結社誌「麦」(綾野南志主宰)11月号の「受贈句集紹介」(同誌編集部)が岡田由季句集『犬の眉』から〈父の膝なまあたたかし氷頭膾〉など10句を抄出し、〈身の回りにあって、誰もが見ている情景である。それを作者独特の感性で俳句に仕立て上げる見事さを、存分に楽しめる一冊〉と紹介。
- 俳句誌「儒艮JUGON」(久保純夫氏編集)9号(11月1日発行)で、松下カロ氏が「楕円の中の眉と毬とユリウス」と題した俳論の中で岡田由季句集『犬の眉』を取り上げ、〈由季は弱いようで強い。暗いが明るい。乾いていながら濡れている。中でも重要なのは「見えるもの」と「見えぬもの」二点の共現である。日常が日常でありながら、そのまま非日常であることを実感させる〉と批評。
- 俳句誌「青山俳句工場05」(宮崎斗士氏編集)第56号(10月15日発行)の「工場長スパナ」(宮崎斗士氏)が、岡田由季句集『犬の眉』を紹介。句集中の1句〈間取図のコピーのコピー小鳥来る〉を〈家族、一緒に暮らすパートナーに手渡すための「コピーのコピー」だろうか。上五中七の何気ない措辞から、新生活への思い、華やぎがいい感じで広がってくる。「小鳥来る」のときめきとも、すこぶる佳き配合〉と鑑賞。
- 日刊紙「県民福井」10月10日のコラム「俳まくら」(秋山孤哮氏)が、岡田由季句集『犬の眉』を紹介し、数句を選んで鑑賞。その中の1句〈羊羹の密度極まる十三夜〉については〈羊羹そのものの特殊な存在感を見事に表している。「極まる」という、お菓子に対しての過剰なる言葉が、羊羹の重さ、黒さ、硬さの質感を表し、それに十三夜の月光を反射させ、甘く艶やかな様子を際立たせている〉と。
- 結社誌「からまつ」(由利雪二主宰)10月号の「他誌燦々」(柴崎雨水氏)が〈人去りし里の一本桜かな 北悠休〉を取り上げ、〈廃村の残った桜の大樹でしょうか。永い風雪に耐え、枝葉を伸ばし毎年花を咲かせて人を楽しませます〉と鑑賞。
- 結社誌「斧」(吉本伊智朗主宰)10月号の「現代俳句評」(中村遥氏)が、岡田由季句集『犬の眉』から〈沖からは真つ黒に見え海の家〉を取り上げ、〈見たままに句となした素直な一句であると言えばそうではあるが、どこか混沌とした世界が見えてくる〉と鑑賞し、句集について〈俳句を詠まない人も容易に味わえる句が多い。が、鑑賞の仕様によっては実に異様かつユニークな世界へと読み手を誘い込む〉と批評。
- 結社誌「香天」(岡田耕治主宰)9.10月号の「俳句鑑賞三六五」(岡田耕治氏)が〈運動会静かな廊下歩きをり 岡田由季〉を取り上げ、〈大勢の人が運動場にいる時、人気の無い廊下を歩いて行く。この静かさ、大勢と隔たっているけれども孤独でない、この距離がいい〉と鑑賞。
- 結社誌「杭」(辻本冷湖主宰)62号(9月1日発行)の「本棚」で、前田霧人氏が岡田由季句集『犬の眉』を紹介。
- 俳句紙「子規新報」167号(8月28日発行)が岡田由季句集『犬の眉』を紹介。坪内稔典氏が同句集の句について、〈ちょっとした取り合わせが絶妙、その取り合わせが詩を生んでいる。しかも、なんとも言えないユーモアを漂わせる。
数へ日やカチカチポッと火の点る
カチカチポッと点った火、それが「数へ日」と取り合わせられると、ガスの火がなんだか意味深に見える〉と批評。 - ウェブマガジン「週刊俳句」9月14日号で、西原天気氏が岡田由季句集『犬の眉』を取り上げ、「16=2の4乗」と題し、〈句に大げさなところのない句集です。ちょっとした「あの感じ」「それ、それ、その感じ」が句になっています。どの句も健やかです。ちょっとしたことにふつうに悦ばしく、あるいはふつうに哀しく反応していく。そういう態度を「健やか」と呼んだりするのです〉と批評。
- ウェブマガジン「週刊俳句」8月17日号で、小野裕三氏が岡田由季句集『犬の眉』を取り上げ、「『見過ごしがち』と『当然に見過ごす』のあいだ」と題して、〈〝つい見過ごしがちな〟ことを「発見」するのではなく、誰もが見ているのに「当然に見過ごす」ことを、巧みに再構成する。石寒太氏も語るように、彼女の「独自性」はまさにここにある。そして彼女の句のもうひとつの特長は、どの句もなんとなく心が温かくなること。これは、彼女の人柄ゆえで、テクニックの問題とは違う話だ〉と批評。
- 総合誌「俳句」(kadokawa)11月号の「俳壇ヘッドライン」が、第6回石田波郷新人賞選考会について記事と写真を掲載。写真の中には齋藤朝比古と谷村鯛夢も。