2015年2月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 総合誌「俳句界」(文學の森)2月号に石寒太主宰が「特別作品21句」を発表。「きさらぎへ」と題し、〈きらきらきらきさらぎのみづ硯のうへ〉〈寒満月跨ぎし女郎蜘蛛太り〉〈寝つきたる妻へ月あることをいふ〉など。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)に石寒太主宰が連載中の「牡丹と怒濤――加藤楸邨伝」。2月号は「第23章 慟哭から遥かなる祈りへ(後編)」。前章で、句集『野哭』(昭和23年2月刊)にある代表的な句の鑑賞をすすめ、「蜘蛛夜々に肥えゆき月にまたがりぬ」という句に至ったところで、筆者(石寒太主宰)は、〈ついでに言えば、楸邨の大嫌いなもののひとつに「蜘蛛」がある〉と切り出し、「蜘蛛嫌い」という楸邨の随筆を紹介しました。この〈大嫌いなもの〉の話を受けて、本章は〈楸邨は句碑を建てるのが大嫌いであった〉という一文から始まります。そして筆者自身が書いた「虹と蛇」という随筆を紹介します。蛇は、筆者の〈大嫌いなもの〉で、筆者が楸邨に従って斎藤茂吉ゆかりの地を巡ったとき、一匹のシマヘビに出くわして、筆者は〈大声を上げ〉、楸邨は「驚けば寒太と蛇や茂吉道」という句を詠んだというエピソードが綴られています。その文章が終って、閑話休題、ふたたび『野哭』の句を丁寧に鑑賞していきます。〈『野哭』は、楸邨の慟哭の詩であり、あらあらしい傷痕の訴えであった。だから、大方が悲痛の句ばかり並んでいる〉のだが、句集の後半には明るい句もいくつか見られ、それらが〈次の『起伏』『山脈』へ、そして、やがて『まぼろしの鹿』へつながる橋となっている〉と本章を結びます。
- 「日本橋倶楽部俳句会」が大正3年の創立から100周年を迎え、昨年12月15日に記念祝賀会を催し、当会の第17代選者を務める石寒太主宰が、「俳句も文化も日本橋から」と題して講演。週刊誌「サンデー毎日」(毎日新聞社)1月4-11日新春合併号、総合誌「俳句」(KADOKAWA)2月号、総合誌「俳句会」(文學の森)2月号、総合誌「俳句四季」(東京四季出版)2月号の各誌が、その講演の模様をレポートして、寒太主宰の写真とともに掲載。
炎環の炎
- 平成26年度「NHK全国俳句大会」(NHKホール1月25日)が選考結果を発表。応募総数41,283句から一次選考会を経て8,194句を入選とし、その入選句の中から15名の選者により、それぞれ特選3句、秀作25句、佳作句を選出。炎環からの応募で選者入選句は以下のとおり。
・井上康明選「秀作」・宇多喜代子選「佳作」・鷹羽狩行選「佳作」〈月山の花野に杖を忘れ来し 加藤美代子〉
・櫂未知子選「佳作」〈別別に歩いてふたり小鳥来る 戸田タツ子〉
・坊城俊樹選「佳作」(題詠「和」)〈製糸場の和瓦の波天高し 伊藤航〉
・正木ゆう子選「佳作」〈淋しいと言はず山茶花日和かな 戸田タツ子〉 - 総合誌「俳句界」(文學の森)2月号「投稿」において、炎環からの応募で各選者の特選・秀逸(秀作)入選句は以下のとおり。
・名和未知男選(兼題「日」)「特選」〈日記よりはみ出す思ひ星月夜 曽根新五郎〉=〈この日の曽根さんは「書き切れぬほどの思ひ」がおありだったのでしょう。それが何であるかは余人には伺い知れませんが、何か共感を覚えました〉と選評。
・稲畑廣太郎選「特選」〈冷やかに風呂敷包み閉廷す 高橋桃水〉=〈裁判所の法廷での様子だろう。弁護士か検察官が書類を風呂敷に包んでいるのを映像で見た記憶がある。弥が上にも季題が雄弁に語っている〉と選評。
・坂口緑志選「秀逸」・豊田都峰選「秀逸」〈なほ続く余震に木の実降りにけり 曽根新五郎〉
・田中陽選(兼題「日」)「秀作」〈咳ひとつ太平洋の没日かな 長濱藤樹〉
・山下美典選(兼題「日」)「秀作」〈まだ残る津波の線に秋日差す 高橋桃水〉
・角川春樹選「秀逸」〈墓洗ひ終りしことを墓に告げ 曽根新五郎〉
・夏石番矢選「秀逸」〈木の葉降る心の底の底のこと 曽根新五郎〉
・宮坂静生選「秀逸」〈片脚の蟋蟀まろびつつ渚 中村万十郎〉 - 総合誌「俳句」(KADOKAWA)2月号が、同誌10月号で募集した「酒の一句」の入選作品を発表。応募603句の中から太田和彦氏が選をし、特選1句、秀逸3句。「特選」〈酒樽の流人の墓地の島の秋 曽根新五郎〉
- 機関誌「現代俳句」(現代俳句協会)1月号「今、伝えたい俳句 残したい俳句」に吉田悦花が寄稿し、同誌10月号の特別作品から5句を選んで鑑賞。その中の「謝れば涼しきことば返さるる」に対しては、〈おそるおそる相手に謝罪のことばを伝えたところ、「涼しきことば」が返ってきた。「夏は涼しく、冬は暖かに」は千利休の茶の極意。ことさら言い募ることのない、さらりと涼やかなことばに、万感の思いが込められていることもある〉と記述。
- 愛媛新聞12月24日のコラム「季のうた」(土肥あき子氏)が〈クリスマスケーキの上が混雑す 岡田由季〉を取り上げ、〈クリームとイチゴ、トナカイに橇をひかれたサンタの人形とヒイラギの葉、そして忘れてはならないメリークリスマスのプレート。まさにすし詰めの混迷状態となり果てるが、そこに定番であることの幸せが凝縮されている〉と鑑賞。
- 結社誌「歯車」(前田弘代表)361号で杉本青三郎氏が岡田由季句集『犬の眉』を取り上げ、〈作品の目のつけ所に、ユニークさ、独自性がある。特に初期作品に、このユニークさや独自性が現れている気がする。「自動ドアひらくたび散る熱帯魚」=魚の機敏な動きが見えるようであり、一瞬の動きをきれいに切り取った。「手の届く範囲きれいに蟻地獄」=蟻地獄の季語から上五中七が出ているとは驚き。「白障子声を綺麗にするための」=声を綺麗にするという感覚の冴え。作者以外には作れない、(普通の人々なら素通りしてしまう、見逃してしまう)景を切り取り俳句とする力に、作者の確かな目を感じるのである〉と批評。
- 結社誌「秋草」(山口昭男主宰)1月号の「平成26年の主宰作品を読む」に岡田由季が寄稿し、山口氏の作品の中から11句を選んで鑑賞。その中の「月を待つみんな同じ顔をして」に対しては、〈月見の準備をしてひとところに集まった人々の様子でも良いし、同時中継的に色々な場所で様々な人が一つの月を待っている光景を思い浮かべても雰囲気がある。イメージされるのは横顔である〉と記述。また「砂利道に遠足の列入りけり」に対しては、「まず聴覚的に納得感がある。大勢の児童が砂利道を歩き始めた時の音の変化が鮮明に伝わってくる〉と。