2015年3月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 総合誌「俳句界」(文學の森)に石寒太主宰が連載中の「牡丹と怒濤――加藤楸邨伝」。3月号は「第24章 「第二芸術」論の波紋」。話はふたたび終戦直後の昭和21年にもどり、本章は次のように始まります。〈戦後になって、再び多くの俳誌が復刊された。雑誌「寒雷」も復刊した(9月)。俳壇は、混迷の中にあった。先の中村草田男の「芸と文学―加藤楸邨氏への手紙」などで、(楸邨が)戦争協力者として非難されたのは、まさにそんな渦中であった(7、8月)。このようなとき、追い打ちをかけるように、桑原武夫の「第二芸術論」が出た(11月)〉。筆者(寒太主宰)は、第13章(昨年4月号)から第20章(11月号)まで草田男の「手紙」をめぐる問題を論じ、それを踏まえて第21~23章では句集『野哭』を鑑賞してきました。ここからは話題を「第二芸術論」に移します。そして楸邨がこれとどのように関わってきたか、これからの展開が楽しみです。
- 結社誌「玉梓」(名村早智子主宰)3・4月号の「現代俳句に学ぶ」(名村柚香氏)が〈きらきらきらきさらぎのみづ硯のうへ 石寒太〉(「俳句界」2月号)を取り上げ、〈「きらきら」と「きさらぎ」はどちらも冷たさとほんのりとした暖かさを併せ持ち、小さな光が集まってくるような明るさを感じさせる。作者は姿勢を正してまず硯に水を注ぐ。まだ冷たい冬の水だが、早春の日を受けてその身をきらきらと輝かせている〉と鑑賞。
- 結社誌「未来図」(鍵和田秞子主宰)2月号の「現代俳句逍遥」(遠藤由樹子氏)が〈落葉降る神の降りたる高さより 石寒太〉(「炎環」11月号)を取り上げ、〈自分なりの鑑賞をゆっくりと熟成したくなる、読み応えのある句だ。降り続ける落葉の中に降臨した神の気配を感じたのだろうか。作者の精神の深い場所から生まれた一句である〉と鑑賞。
炎環の炎
- 総合誌「角川」(KADOKAWA)3月号の「今日の俳人」に岡田由季が、「肉眼」と題して〈縄跳びのリズムのままに帰りゆく〉〈鎌鼬会社にたどりつく手前〉など7句を発表。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)3月号の「俳句会への招待――注目の俳人をピックアップ!!」に辺見狐音が、「会津路」と題し〈囀や鳥に訛のあると言ふ〉など5句を発表。
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)3月号に宮本佳世乃が、「腹這」と題して〈腹這になつても春の来てをりぬ〉など5句と渡良瀬渓谷についての短文を発表。
- 第9回角川全国俳句大賞作品集「俳句生活2015」(角川学芸出版)に、第8回受賞者の招待作品として三輪初子が、「手のひら」と題し〈望むらくは天の川ゆきエレベーター〉など5句と短文を発表。
- 東京新聞2月1日「東京俳壇」小澤實選〈氷面鏡小鳥しきりに首かしげ 渡辺広佐〉
- 東京新聞2月15日「東京俳壇」鍵和田秞子選〈下校児のやがて駆け出す寒さかな 片岡宏文〉
- 総合誌「俳句界」(文學の森)3月号「投稿」(兼題「前」)名和未知男選「秀作」〈父は曽根母は前田の墓参り 曽根新五郎〉
- 結社誌「狩」(鷹羽狩行主宰)3月号の「秀句探索」(佐藤博美氏)が〈数へ日といふいちにちの暮れにけり 齋藤朝比古〉(「俳句年鑑」2015年版)を取り上げ、〈一年もあと数日。暮れ方にも格別な思いが湧きあがる。不思議と言えば不思議だが、一年の終わりと始まりには何か言いようのない大きなエネルギーが働き、それに包まれている気さえする〉と鑑賞。
- 第69回現代俳句協会賞の候補となった齋藤朝比古句集『累日』。これを推した選考委員の選後評を、機関誌「現代俳句」(現代俳句協会)1月号が掲載。桑原三朗氏は〈独自な視点からの新鮮な表現の確かさに十分な魅力があった〉と批評。竹本健司氏は〈日常にあって日常を脱した視点の新鮮さ、観察眼の確かさを見る〉と批評。遠山陽子氏は〈身のまわりに起こる平凡な事や物のさまざまを、さりげなく取り上げ一句にしているのだが、当たり前のことが、当たり前でない魅力に変わる微妙な一点への気付きが非凡だ。玄人好みのする心憎い作家である〉と批評。
- 結社誌「鬣 TATEGAMI」(林桂代表)第54号の「書評」で永井貴美子氏が岡田由季句集『犬の眉』を取り上げ、〈白地に寒色系の色を使ってハートのような葉っぱが、まあるくタイトルの『犬の眉』を囲んでいる。気持ちのよいデザイン。表紙をめくると、目が覚めるようなターコイズブルーの見返し。水玉の透かしが入ったかわいい扉。甘過ぎない大人センスのかわいい本。日常のなかのちょっと不思議でおもしろいことを見つけ出す観察眼は、きっと書く前から持っていたものだろう。彼女の周りを流れている時間はとても緩やかで、そこにおこる日常、彼女にだけ見えている何かを、丁寧に受け止めて言葉をじっくり選んで作句しているのがわかる〉と批評。
- 結社誌「枻」(橋本榮治・雨宮きぬよ代表)2月号の「現代俳句を読む」(有住洋子氏)が〈虫時雨宝石箱が閉まらない 岡田由季〉(「俳句あるふぁ」10・11月号)を取り上げ、〈ウィーンで身なりのよい老婦人の耳元にはきっと古風で凝った細工の耳飾りが揺れている。没落した人々は屋敷を手放すとき、何を持ってゆくだろう。身の回りの品だけをまとめたトランクにそっと入れるのは宝石箱。虫時雨がハプスブルク家にゆかりの人々の歴史に留まらず、時代と地域を越えた人々の思いや、死者の声と重なってゆくようだ〉と鑑賞。
- 桐生タイムス1月20日のコラム「きょうのうた」(杉みき子氏)が〈咲きながらおほかみの足跡のゆく 宮本佳世乃〉を取り上げ、〈狼の足跡が雪の上に点々と続いているのを、花が咲きつづけているようだと詠む。あるいはもしかしたら、すでに撃たれて傷ついて、こぼれる血を花にたとえたのか〉と鑑賞。