2015年8月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 総合誌「俳句界」(文學の森)に石寒太主宰が連載中の「牡丹と怒濤――加藤楸邨伝」。8月号は「第29章 「第二芸術」論の波紋(六)」。前号につづき、「炎環」が創刊20周年記念事業の一環として2007年に実施した、現代俳人と「第二芸術」論に関するアンケートの分析結果です。これは、炎環同人の伊藤無迅氏(すでに退会)が執筆し、2008年1月号(20周年記念号)にて発表したもので、本章には、その後半部分が原文のまま転載されています。ここで扱われているテーマは、「第二芸術」論の俳壇・俳人にあたえた影響について、さらに、「第二芸術」論をめぐる論争はすでに終息したか否かについて、そして、この論にまつわる回答者個々人の意見について。当のアンケートでは設問への回答方式に選択式のものと記述式のものがあり、この「分析結果」においては、選択式回答については数量的な集計結果に執筆者が考察を加え、記述式回答については執筆者がその内容を分類整理して、回答者の実名とともにその記述内容を公開しています。選択式回答の分析と考察には、たとえば次のようなものがあります。「第二芸術」論は未だ終息していないと思う回答者に向けて、アンケートは、この論が指摘し今だに未解決の具体項目はどれかと問い、その選択肢として次の7項目を用意しました(複数回答可)。すなわち「根源俳句の未収束」「社会性俳句の未収束」「俳壇の在り方」「結社の在り方」「俳人の在り方」「俳句雑誌の在り方」「その他」。これに対する回答は、〈「俳壇の在り方」(25%、68人)、「結社の在り方」(21%、59人)、「俳人の在り方」(20%、58人)、「(総合)俳句雑誌の在り方」(20%、58人)に四分された。この結果は現代の俳人が、「第二芸術」論をどう捕えているか、を知る上で非常に興味あるものであった。何故なら桑原批判は大別して「俳句の文学性批判」と、「俳人・俳壇の体質批判」の二つであるが、大半(86%)が後者に属する項目を上げているからである。前者(「俳句の文学性批判」)に属するものは僅かに8%(「根源俳句/社会性俳句の未終息」)である。この結果で見えてきたのものがある。第一章(この「分析結果」の前半部、同誌7月号に掲載)で述べた「大半の俳人は「第二芸術」論に関心を示しながらも、日頃の俳句活動では意識上の制約となっていない」という疑問に、この結果はひとつの解を提供してはいないだろうか。即ちこれらの項目は「俳人の在り方」を除き、少なくとも俳句実作上の主たる制約にはなり得ないからである〉と考察しています。
炎環の炎
- 小嶋芦舟が、句集『埠頭』を、文學の森より7月17日刊行。序文を石寒太主宰が「苦海に浮ぶ一艘の芦舟」と題して認め、〈芦舟さんは「あとがき」の中で、「ひとりよがりの句はできるだけ作るまい、作っても人に感動を与えることが出来ない、そんな考えが私の頭に徐々に積み込まれて来たように思う」といっている。それがいつの間にか芦舟さんの俳句信条につながっていったのであろう〉と紹介。
- 朝日新聞7月12日「朝日俳壇」金子兜太選〈壊れゆく日本六月豪雨かな 池田功〉=〈憲法九条に集団的自衛権を託そうとするのは自滅行為だ〉と選評。
- 朝日新聞7月12日「朝日俳壇」長谷川櫂選〈沖縄に戦後はあらず海紅豆 寺半畳子〉
- 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)8月号「平成俳壇」名村早智子選「秀逸」〈診察台の小さき枕鳥雲に 山崎彩〉
- 総合誌「俳句界」(文學の森)8月号「投稿俳句界」
・角川春樹選「秀逸」〈死の話すこし交はせし蝶の昼 長濱藤樹〉
・高野ムツオ選「秀逸」〈ぶつかれる水の白さや芽吹山 結城節子〉〈島人になりきつてゐし山椿 金川清子〉 - 結社誌「玉梓」(名村早智子主宰)7・8月号の「現代俳句に学ぶ」(名村柚香氏)が、〈起立礼着席揃ひ卒業す 谷村鯛夢〉(「俳句」6月号より)を取り上げ、〈高校を卒業して以来「起立、礼、着席」という号令をかけることもかけられることもなくなったと今更ながら気付く。何年間も毎日毎時間繰り返されてきたことであったのに。思春期の私たちにとっては、号令よりも大事なことや関心のあることは山ほどあった。だが、卒業式の日。最後の号令にクラス全員の息がぴたりと揃う。卒業する子どもたちの心の機微を絶妙に詠まれた句〉と鑑賞。
- 機関誌「俳句春秋」(NHK学園)7月号「春秋俳壇」宇多喜代子選「入選」〈果てのなき鉄道クイズ春炬燵 たむら葉〉
- 機関誌「現代俳句」7月号「今、伝えたい俳句 残したい俳句」に宮本佳世乃が寄稿し、同誌4月号の特別作品から5句を選んで鑑賞。その中の「口中のちりめんじやこに目が沢山」に対しては、〈掲句に書かれているものは、溢れ出さんとするちりめんじゃこの生命だ。私たちは生きるために生命をいただいているが、小さな魚を一気に何匹も口に含むことを躊躇なくやってのける。行為の恐ろしさを思う〉と記述。
- 俳句マガジン「100年俳句計画」(マルコボ.コム)6月号の「句集の本棚」が岡田由季句集『犬の眉』を紹介し、岡田一実氏が〈生きるということが楽しく感じられる瞬間や物事の交差の不思議を丁寧に掬い上げている。日常を新しく感じられるようになるような気分をもたらしてくれる一冊である〉と評価。