2017年4月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 総合誌「俳句界」(文學の森)4月号の巻頭グラビア「俳句界ニュース」が、「炎環」平成29年新年句会・懇親会(1月22日)について、カラー写真と記事を掲載しました。記事には、石寒太主宰の新年のアピールとして、〈炎環の「炎」は新しい火種。炎環の「環」はみんなの輪、平和の和。炎環でしかできない、新しい俳句仲間の雑誌に育てて行きたい〉という言葉を記述しています。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)に石寒太主宰が連載中の「牡丹と怒濤――加藤楸邨伝」。4月号は「第49章 短歌をつくりつづけた楸邨(三)」。冒頭においてまず、楸邨が〈晩年までずっと短歌をつくりつづけていた〉ことを強調して、『加藤楸邨全集』の編集に携わった筆者(石寒太主宰)だからこそ知るエピソードを語ります。それは、出版社側が当初『全集』から短歌を外したがったのに対して、〈楸邨は、「ぜひ、短歌だけは入れて欲しい。未発表のものもすべてをふくめて……」そう、強く主張した。この要請はかなり必死だった。他のどんなものを削ってもいいから、ぜひ短歌を収録したい、そんな悲痛にも似た願いでもあった〉というものです。結果として『全集』は551首もの短歌を収めますが、筆者(寒太主宰)は『全集』の解題に次のように書きました。〈楸邨が短歌から出発し、その後俳句に転向したことは巷間よく知られている。しかし、俳句に移行してから現在まで、ずっと短歌が作られていたことは、この全集によってはじめて明らかになった事実である。このことだけとっても、今度の全集の意義は十分にある〉。さて、その楸邨の短歌はいかなるものであったか、筆者(寒太主宰)は本章で歌人塚本邦雄の文章を引き、そこで塚本は〈もし楸邨が歌の道に進んでいたとしても、必ず第一線の歌人として大成したであろう、そう驚嘆している〉ことを示します。また詩人大岡信が〈楸邨の歌は「未練」である〉と言ったことについて、この言葉は、〈つまり、俳句にして断ち切られ、まだ尾を引いている内的抒情、それを満たすかたちで生まれたのが(楸邨の)短歌であった……、という意を述べている。まさに卓見であると思う〉と記します。
炎環の炎
- 毎日新聞3月7日のコラム「季語刻々」(坪内稔典氏)が、《不純異性交遊白魚おどり食い 田島健一》を取り上げ、〈白魚のおどり食いは不純異性交遊みたいなものだ、というのだろう。「蝶追へば不純異性交友にさも似たり」(筑紫磐井)という句もあるが、「不純異性交友(遊)」とは私の高校時代の言葉。男女が2人で映画を見たり喫茶店に入ったりしたらそれに該当、停学や謹慎などの処分を受けた〉と鑑賞。句は句集『ただならぬぽ』より。
- 朝日新聞3月13日「朝日俳壇」が田島健一句集『ただならぬぽ』を、〈言葉の独特な組み合わせや反復が非日常へと誘うよう〉と紹介して、〈二十日鼠のまなざしを継ぎ億の雪〉を抄出。
- 「長谷川零余子記念・第9回藤岡市桜山まつり俳句大会」(群馬県藤岡市2月5日)が応募総数2185句の中から、4名の選者により各特選3句、入選100句を選出のうえ、大賞1句、特別賞11句の各賞を決定。
◎「特別賞」〈零余子へ風音こぞる冬桜 竹市漣〉
・高橋洋一選「入選」〈零余子の深眼差しへ冬櫻 曽根新五郎〉
・高橋洋一選「入選」〈零余子の瞳のやうな竜の玉 曽根新五郎〉
・高橋洋一選「入選」〈彼岸より此岸の大事冬ざくら 北悠休〉
・高橋洋一選「入選」〈嶺めざし大志抱きて鷹渡る 佐藤弥生〉
・高橋洋一選「入選」〈冬ざくら揺れゐて影のなかりけり 結城節子〉
・中里麦外選「特選」〈零余子へ(前掲)竹市漣〉
・中里麦外選「入選」〈零余子の声寒風の中に立つ 加藤美代子〉
・星野光二選「入選」〈零余子の瞳(前掲)曽根新五郎〉
・星野光二選「入選」〈冬桜と云へど色気のたつぷりと 長濱藤樹〉
・吉岡好江選「入選」〈言ひ過ぎしことの反芻冬ざくら 伊藤航〉
・吉岡好江選「入選」〈零余子へ(前掲)竹市漣〉 - 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)4月号「平成俳壇」
・井上康明選(題「昭和のシンボル」)「秀逸」〈天皇とマッカーサーの日永かな 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句界」(文學の森)4月号「投稿俳句界」
・原和子選「特選」〈極月の監視カメラの作動中 曽根新五郎〉=〈私たちの日常にはこの監視カメラが休むことなく働いている。ことに師走、慌ただしい街中では、どこからでも「私」が映されている〉と選評。
・田中陽選(題「道」)「秀作」〈ポケットに鯛焼ひとつ夜の道 松本美智子〉
・能村研三選(題「道」)「秀作」〈道標の逆を巡りし紅葉狩 曽根新五郎〉
・岸本マチ子選「秀逸」〈小春日や孫の手紙の誤字脱字 堀尾一夫〉
・夏石番矢選「秀逸」〈誕生日一日前の冬怒濤 金川清子〉 - 読売新聞「読売俳壇」
・3月13日小澤實選〈梅見茶屋フランクフルトソーセージ 堀尾一夫〉 - 朝日新聞「朝日俳壇」
・2月27日金子兜太選〈耕せばただひたすらの人となる 渡邉隆〉=〈「ただひたすらの人」と言えてお見事。土と一体化の自覚〉と選評。 - 「第18回虚子・こもろ全国俳句大会」(4月29日、長野県小諸市)
◎「読売新聞長野支局賞」〈塩引きの口の曲がりも我が故郷 高橋桃水〉 - 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)4月号の「新刊サロン」に宮本佳世乃が坪内稔典著『ヒマ道楽』(岩波書店)の書評を寄稿、〈本書は『モーロクのすすめ』の続編。坪内氏といえば、カバを詠んだ俳句がたくさんある。遊び心のある句を作れる時間というのは、ふだんの時間のありようとは違うのではないだろうか。それは子どもや老人が持っている時間と似ている。人間は、他の哺乳類よりも子どもである期間と高齢である期間が構造的に長い。成人と比較すると生産性や生殖性から自由になる時期だ。各々に流れる時間は「あそび」や「モーロク」であり、両者ともわずかに聖性をもつ〉と記述。
- 結社誌「青垣」(大島雄作主宰)4月号の「俳句の秀峰」(高橋あゆみ氏)が、《雪しまく少しづつ足す経験値 増田守》を取り上げ、〈若さに任せて突っ走ったほろ苦い思い出も一つの経験として身につく。この経験という足し算が、人間としての幅や奥行に繋がっていくのだろう。「雪しまく」は、雪まじりの強風を言うが、何事も順風満帆とはいかないとの教えのようにも感じられる〉と鑑賞。句は「俳句」12月号より。
- 結社誌「月の匣」(水内慶太主宰)4月号の「詩海展望」(若山千恵子氏)が、《巻尺の最後の目盛り日脚伸ぶ 増田守》を取り上げ、〈ミリ単位で伸びてゆく日脚に、「巻尺」という意識的な句材をして、春待つ思いを表現した感覚の面白さに惹かれた〉と鑑賞。句は「俳壇」2月号より。
- 西川火尖の活動。
・第24回西東三鬼賞秀逸入選
・俳句ウェブマガジン スピカ 「つくる」三月連載
・詩誌「マンガの友」vol.2 俳句作品14句寄稿
・俳誌要覧2017 自選三句掲載