2021年2月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の炎
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)2月号の「精鋭16句」に倉持梨恵が「幾何学模様」と題して、〈小春日や窓に向きたる歯科の椅子〉〈冬の月人連れ去りし終電車〉〈焚火より持ち帰りたる火の匂ひ〉〈鉄塔の幾何学模様日脚伸ぶ〉など16句を発表。
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)2月号の企画「ステイホーム中につき、写真で一句詠んでみました。」が、鳥取砂丘の写真で詠んだ山岸由佳の一句〈一月の砂のひかりの家族かな〉を掲載。
- 総合誌「俳句界」(文學の森)2月号「俳句界投稿欄」
・高橋将夫選(題「新」)「秀作」〈値の高き分のかがやき新秋刀魚 山内奈保美〉
・大串章選「秀逸」〈薄紅葉土器投げの深き谿 堀尾笑王〉
・加古宗也選「秀逸」〈しろがねの梯子を池に松手入 結城節子〉
・古賀雪江選「秀逸」〈泥亀のそろり首出す十三夜 小野久雄〉
・辻桃子選「秀逸」〈時雨忌の背の小ぶりのリュックかな 山内奈保美〉
・中村正幸選「秀逸」〈月光を折つて折鶴飛ばしたる 赤城獏山〉
・西池冬扇選「秀逸」〈堤防に自転車並ぶ鯊日和 松本美智子〉 - 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)2月号「令和俳壇」
・対馬康子選「秀逸」〈風になり波にも島の踊かな 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)1月号「四季吟詠」
・由利雪二選「特選」〈きっと嘘小鳥が来たら訊いてみる 山本うらら〉=〈「小鳥来る」この季語が作品の情緒を支配している。「きっと嘘」の嘘は騙されて嫌な気持ちの否定、あるいは惨めな思いの否定ではない。「嘘でしょ、嘘よきっと嘘」と嬉しさを抑えきれない「弾んだ声」が聴こえる〉と選評。
・名村早智子選「秀逸」〈屋上はひとりの浄土今日の月 曽根新五郎〉
・宮坂静生選「秀逸」〈いつまでも沈まぬ父の盆の舟 曽根新五郎〉
・宮坂静生選「佳作」〈都への侵攻曼珠沙華の火群 赤城獏山〉
・今瀬剛一選「秀逸」〈青田波馬上の少女手をふれり 赤城獏山〉
・冨士眞奈美選「佳作」〈生身魂真顔で申す駄洒落かな 赤城獏山〉
・冨士眞奈美選「佳作」〈連れ歩く影もリハビリ秋暑し 曽根新五郎〉
・寺井谷子選「佳作」〈反り返るくさやの干物秋暑し 曽根新五郎〉
・藤田直子選「佳作」〈しばらくは仏間へ放つ螢かな 曽根新五郎〉
・鈴木節子選「佳作」〈萩白し風が墓石を研ぎゆけり 赤城獏山〉
・川村智香子選「佳作」〈八月の鴉の開ける赤き口 松橋晴〉
・渡辺誠一郎選「佳作」〈瞳のやうな月天心の湖心かな 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)2月号「四季吟詠」
・浅井愼平選「秀逸」〈秋つばめひげそり買ひに行く漢 松橋晴〉
・浅井愼平選「佳作」〈マスクして母と語りし夜長かな 曽根新五郎〉
・二ノ宮一雄選「秀逸」〈行く秋の船窓の顔遠ざかる 曽根新五郎〉
・井上弘美選「佳作」〈海神の総身の雫秋時雨 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句αあるふぁ」(毎日新聞出版)冬号「あるふぁ俳壇」
・池田澄子選「入選」〈金色の鯉秋水を動かしむ 曽根新五郎〉=〈冷ややかに澄んだ水を動かすものとして何が似つかわしいか。枯葉の着水、水鳥真鯉緋鯉いろいろあるけれど、そりゃ~金色の鯉の光が神秘的で〉と選評。
・井上弘美選「佳作」〈シーソーに校帽ひとつ虫時雨 中川志津子〉 - 毎日新聞1月11日「毎日俳壇」
・西村和子選〈煤逃げを見送る猫の薄目かな 谷村康志〉 - 産経新聞1月14日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈鯛焼を頬張り通夜に向かひけり 谷村康志〉 - 東京新聞1月17日「東京俳壇」
・小澤實選〈鯛めしに寒卵二個絡めけり 渡辺広佐〉 - 毎日新聞1月18日「毎日俳壇」
・小川軽舟選〈煤逃や雀荘前で待ち合はせ 谷村康志〉 - 産経新聞1月28日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈しきたりを嫁に乱され年用意 谷村康志〉 - 産経新聞2月4日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈餅を搗く空手初段の妻なれば 谷村康志〉 - 朝日新聞2月7日「朝日俳壇」
・長谷川櫂選〈風花や足湯の足のみな白し 渡邉隆〉 - 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)2月号の「合評鼎談」(髙柳克弘・伊藤伊那男・堀田季何の各氏)の中で、同誌12月号掲載の近恵作「きよしこの」について、〈堀田「《よく笑う二人の間のストーブ》=「の」が下五にかかるところで、〈間〉のスペースが出ているか。《容赦なく針をこぼして冬銀河》《聖しこの夜防災セットのロウソク》=実感がありますね。《マフラーがきつくて全部忘れたわ》=場合によつてはちょっと棘があつたり、過剰な言い方をしてみながらも、きちっと着地させているのがいい」、伊藤「題は「きよしこの」です。「夜」が入っていない。この辺、世相にちょっと背を向けたようなところが、もしかしたらあるのか。《白鳥の聞こえる窓辺煙草に火》=〈煙草に火〉の下五への展開がこの人らしい。《洋菓子の箱のリボンの冷たさよ》=彼女の句の作り方からすると平凡なほうに入るのかもしれないが、私はこういうところが好きです」〉と合評。
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)1月号の「俳句へのまなざし」(大西朋氏)が、《絨緞の立て掛けてあり蚤の市 柏柳明子》を取り上げ、〈蚤の市で売られる様々なものは、見ているだけでも楽しい。絨毯は場所を取るため、巻いたまま立て掛けてある。見物の人に聞かれたら、少し広げて説明する。あるいは市の終わりまで聞かれもせず売れもせず、ずっと立て掛けたまま〉と鑑賞。句は「俳句四季」11月号より。
- 総合誌「俳壇」(本阿弥書店)2月号の「俳壇月評」(前北かおる氏)が《洋菓子の箱のリボンの冷たさよ 近恵》を取り上げ、〈お祝いの食事が進み、いよいよテーブルにクリスマスケーキの箱が据えられ、そのリボンに手をかけたのです。その瞬間、リボンの予期せぬ「冷たさ」を感じたという俳句です。リアルな触感がとても印象的に詠まれています〉と鑑賞。句は「俳句」12月号より。
- 総合誌「俳句αあるふぁ」(毎日新聞出版)冬号の「水の歳時記365日」が2月4日の項に〈うすらひの水となるまで濡れてをり 齋藤朝比古〉を採録し、〈春浅い頃にごく薄く張った氷、または解け残った薄い氷を薄氷といいます。消えやすく、はかない薄氷。少しずつ氷が解けていくその表面はもう水のよう。「濡れてをり」がその繊細な美しさを伝えます〉と解説。
- 結社誌「郭公」(井上康明主宰)2月号の「俳壇の今」(廣瀬悦哉氏)が《芽柳に水の乳房のある日暮 近恵》を取り上げ、〈対象をじっくりと見つめた句である。さみどりの「芽柳」に水滴がびっしりと付いている情景。その水滴のひとつひとつを「乳房のある」と形容した。滴が、今にも零れ落ちそうでありながら、しっかりと「芽柳」を離れない。春未だ浅い「日暮」時、少し冷えてきた。薄暮の光に滴が輝く〉と鑑賞。句は『角川俳句年鑑二〇二一年度版』より。
- 結社誌「繪硝子」(和田順子主宰)2月号の「現代俳句鑑賞」(山口冨美子氏)が《赤とんぼ魔法のやうな兄の指 柏柳明子》を取り上げ、〈兄は逞しく頼りになる存在であり限りなく優しい。兄の指は魔法のように様々なことが見事に出来るのである。兄を尊敬する心情がしみじみと温かく詠まれている。赤とんぼの季語によって詩情豊かな一句となった〉と鑑賞。句は「俳壇」11月号より。
- 結社誌「蛮」(鹿又英一主宰)第56号(1月1日発行)の「総合誌より佳句鑑賞」(佐藤久氏)が《冬銀河最後の螺子の締まりけり 柏柳明子》を取り上げ、〈私は冬銀河に都会の工事現場を思い浮かべた。冬の星空の下、陸橋の桁を取り付けているのだろうか。その仕上げの最後の螺子が締まったというのだ。きりりと螺子の締まる音も聞こえてくる。もちろんこれは作者の心象でもある。さて橋は完成した。遥かな銀河を思いながらこの橋を渡っていこう〉と鑑賞。句は「俳句四季」11月号より。
- 結社誌「秋麗」(藤田直子主宰)2月号の「現代俳句を読む」(重信通泰氏)が《安楽死の犬の帰宅よ秋の風 菅原輝子》を取り上げ、〈快復の望みなく苦しむ作者の愛犬が、安らぎを得るには安楽死しか選択肢がなかったのだろう。悲しい決断、そして冷たくなった愛犬が家に帰ってきたときの作者の気持ちは計り知れない。秋風が吹く季節、作者の心の中にも冷たい秋の風が悲しく吹きわたった〉と鑑賞。句は「炎環」11月号より。
- 朝日新聞1月26日「ひと」欄が〈47都道府県の子守歌を動画配信したフルート奏者〉の見出しで吉川久子を紹介、〈子守歌の魅力をフルートの音色に乗せて、お母さんやおなかにいる赤ちゃんに届けたい。こんな思いから、2017年に全国ツアーを始めた。三重、千葉、秋田、山梨など10県を回ったところで、コロナ禍により中断を余儀なくされた。そこで、47都道府県に伝わる子守歌を演奏した動画の配信を始めた〉と記述。吉川久子のYouTube公式チャンネル