2022年7月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 毎日新聞7月6日のコラム「季語刻々」(坪内稔典氏)が《青岬いよいよ異端たらむとす 石寒太》を取り上げ、〈作者はこの句に触れて、「伊豆半島の生まれ。久しぶりに伊豆の先端、石廊崎に立つ。海をながめている。前もそうであったが、いよいよ『異端』を目指す、そう思う気持が強まる」と書いている(「寒太独語寒太俳句365」)。私もつい先日、生まれ育った四国の佐田岬半島へ久しぶりに行った。海賊の末裔らしい老人になろう、と思った〉と綴っています。
炎環の炎
- 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)7月号の「角川俳句賞作家の四季 夏」に第67回受賞者岡田由季が、「神鶏」と題して〈越して来てはや鉄線を咲かす家〉〈そこここに古墳あちこち花蜜柑〉〈燕子花吉事の向きに折る懐紙〉〈牛蛙鳴きてあたりの穴めきぬ〉〈蛞蝓の出るまでめくる神鶏たち〉など15句を発表。
- 「第22回「俳句四季」全国俳句大会」(東京四季出版)が7名の選者(秋尾敏・上迫和海・上田日差子・白濱一羊・藤田直子・中田水光・松尾隆信・山田貴世の各氏)により、大賞1句・優秀賞2句・佳作6句を決定し(大賞は同一選考句があり取消し)、総合誌「俳句四季」7月号に発表。
○「佳作」〈被災地の物みな洗ふ墓洗ふ 曽根新五郎〉
○「佳作」〈雛の間の一灯残し眠りけり 曽根新五郎〉
○「浅井愼平賞」〈雛の間の(前掲)曽根新五郎〉=〈静かな佇いの季節感が美しく深々と伝わって来た。そこにある郷愁もまた香りとなって漂ってくる。懐かしさを伴って〉と選評。 - 総合誌「俳壇」(本阿弥書店)7月号「俳壇雑詠」
・能村研三選「秀逸」〈こころより言葉は生まれ地虫出づ 曽根新五郎〉
・森田純一郎選「秀逸」〈人間を嫌はずにゐる石たたき 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)7月号「四季吟詠」
・田島和生選「特選」〈潮引いて引いてちらばる桜貝 曽根新五郎〉=〈波が引いてゆくにつれ、桜貝が渚に幾つも現れる光景を、リフレインで詠み上げ、調べもいい。まるで、つやつやの桜貝が目に見えるよう〉と選評。
・由利雪二選「特選」〈船窓の顔へ手を振る卒業季 曽根新五郎〉=〈学校行事は一学期・二学期・三学期と「期」で区切っている。しかしこの句、「卒業季」と別の区切り方をしている。それが式根島の光景や島人の暮らしまで想像させている〉と選評。
・名村早智子選「秀逸」〈みちのくの余震三寒四温かな 曽根新五郎〉
・宮坂静生選「秀逸」〈どこからか鳴きやどかりの鳴く夜かな 曽根新五郎〉
・加藤耕子選「秀逸」〈海神へ向かつて吹きししやぼん玉 曽根新五郎〉
・藤田直子選「秀逸」〈漁師には貧乏月の二月かな 曽根新五郎〉
・藤田直子選「佳作」〈のどけしや平和な国の救急車 森山洋之助〉
・鈴木節子選「秀逸」〈海鼠嚙むジュラ紀の海を幻想す 赤城獏山〉
・髙橋健文選「秀逸」〈初漁の日の海鳥の乱舞かな 曽根新五郎〉
・渡辺誠一郎選「秀逸」〈春の風地蔵菩薩の手の木目 松橋晴〉
・渡辺誠一郎選「秀逸」〈戦争をまったく知らぬ初雛 曽根新五郎〉
・冨士眞奈美選「佳作」〈春隣上れ瀬戸内観覧車 阪上政和〉
・寺井谷子選「佳作」〈被爆樹の残る力の芽吹かな 曽根新五郎〉
・寺井谷子選「佳作」〈呼出の救急外来春の月 長濱藤樹〉
・古賀しぐれ選「佳作」〈春昼の地下道に売るメロンパン 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句界」(文學の森)7月号「投稿欄」
・題「吹」名和未知男選「秀作」〈ここに泉あり廃校の花吹雪 赤城獏山〉
・稲畑廣太郎選「秀逸」〈年とらぬ手配写真や辛夷咲く 森山洋之助〉
・稲畑廣太郎選「秀逸」〈冴え返るピアノに映る蛍光灯 堀尾笑王〉
・能村研三選「秀逸」〈水底の石に日のある余寒かな 曽根新五郎〉 - 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)7月号「令和俳壇」
・井上康明選「推薦」〈海鳥の千のくちばし風光る 曽根新五郎〉=〈アホウドリやオオミズナギドリなどといった海鳥が繁殖地に千羽以上群れている。漁業対策、汚染防止、繁殖地の保護などの保護活動によって多くの海鳥が群れるようになったのだろう。春の光る風はその希望を示す〉と選評。
・白濱一羊選「秀逸」〈一本の釣り竿売れし日永かな 曽根新五郎〉 - 朝日新聞6月12日「朝日俳壇」
・小林貴子選〈「蜘蛛ですが、何か」と壁に身動がず 渡邉隆〉 - 産経新聞6月16日「産経俳壇」
・寺井谷子選〈つちふるや古書肆に猫の出入口 谷村康志〉 - 産経新聞6月23日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈葉桜や埃をかぶる資本論 谷村康志〉 - 読売新聞6月27日「読売俳壇」
・矢島渚男選〈石段の上の神域青嵐 堀尾笑王〉=〈ふつう鳥居を潜ると神域だが、石段を上がってそこに神社がある。「石段のはじめは地べた秋祭 三橋敏雄」に学んだか、正確な句作りだ〉と選評。
・正木ゆう子選〈足の指ぬつと大きく箱眼鏡 谷村康志〉 - 読売新聞7月4日「読売俳壇」
・矢島渚男選〈立ち退きに蔵抵抗す燕の子 谷村康志〉 - 日本経済新聞7月9日「俳壇」
・横澤放川選〈干梅の匂ひや介護日誌書く 谷村康志〉=〈生活と家庭そして家族構成などあれこれと思いを及ばせる句だこと。あるいは干梅の作業もゆだねられてか。恙のなかの静穏さよ〉と選評。