炎環全国大会 in 松山 - 吟行・句会の記録
2016年8月1日 14:13
「炎環全国大会in松山」が、6月4日(土)・5日(日)の二日間にわたり、愛媛県松山市で開催されました。首都圏を離れた全国規模の大会としては炎環初の試みで、全国から68名の炎環人が参集。正岡子規をはじめ多くの偉大な俳人にゆかりのある俳句の聖地で、石 寒太主宰の指導のもと、初日は吟行、翌日に句会が行われました。
スライドショー
写真撮影:柿ノ木 裕 中西 光 松本 平八郎
語り:市ノ瀬 遙
吟行レポート
武知 眞美(松山在住)
いつもなら駅舎には出迎えの燕たちが飛び交っている。梅雨入りをしたこの日は、雨が、道後の街をまた違った風情に塗り替えていた。
石寒太主宰をはじめ全国から集まった炎環会員は総勢68名。昼食もそこそこに句帳を手に思い思いの場所へと向かって行った。
旅に出れば、その土地の住人になったつもりで歩いてみる・・誰かの言葉を思い出す。きっと松山人の眼で見た言葉が書き込まれることだろう。
子規堂では何人もの見馴れたお顔に出会った。子規の埋髪搭に手を合わせ、復元された邸宅に足を踏み入れる。わずか三畳の勉強部屋、遺墨、虫喰いの文机。幼い日の子規の息遣いを誰もが感じたことだろう。雨音や硝子窓に揺れる青葉も時空を越える働きをしていたかも知れない。
道後宝厳寺は一遍上人の生誕地。遊郭が並ぶ坂の上にあるその寺へ、子規と漱石は連れだってやって来た。山門の石段に腰を下ろし、松山城を遠くに眺めながら俳句を作った。
- 色里や十歩はなれて秋の風 正岡子規
境内のこの句碑の前に佇み、雨に句帳を濡らしながらひとつひとつ言葉を拾い上げている姿があった。もしかしたら子規と漱石の会話も聞こえていたかも知れない。
雨の松山城へ向かった人も多い。坂を登り切って仰いだ天守閣はどう映っただろう。
遠くの石鎚山や瀬戸の海は見えなかったが、360°見渡せる景色はきっと趣があったはず。
山頭火の終の棲家である「一草庵」では、観光客に山頭火を熱く語る「炎環のSさん」の姿があったと聞く。山頭火のファンはやはり情熱的だ。
見馴れた景色は五感をするりと通り抜けてしまう。見ていながら見えていない景色がある。句会で出会った句には、68名の眼で見た松山の景色がびっくりするほど新鮮に詠まれていて、五感を呼び覚ましてくれた。また、主宰の句評の中には子規や山頭火への思いが溢れており、とても豊かな気持ちにさせていただいた。
道後温泉本館のガス灯に燈が点り雨にけぶっている。その下を大勢の浴衣を着た人たちが行き交っている。「俳句」というたったひとつのご縁で繋がった時間の不思議を思わずにはいられない。
句会結果(選:石 寒太主宰)
天地人
- 天 子規堂の絶筆三句男梅雨 長濱 藤樹
- 地 一草庵の「一」の跳ねゐし夏つばめ 吉田 空音
- 人 青梅雨や漱石の句に子規の丸 市ノ瀬 遙
本選 5句
- 葛饅頭添へ律さんの置手紙 竹内 洋平
- 夏つばめ子規の雅号の「面読斉」 三橋 瑞恵
- 何処にも句碑ある市よ風涼し 島 青櫻
- 子規堂の旅立ちの像花うつぎ 中西 光
- 鳴雪の髯触りたし青葉雨 真中 てるよ
(他 予選20句)
「炎環」は、主宰・石 寒太(師系・加藤 楸邨)の指導の下、心と言葉をひとつにした「心語一如」の精神をめざす、有季定型・旧仮名遣いを基本とする俳句集団です。俳句に興味のある方、句会に参加してみたい方、どなたでも歓迎いたします。